MATLABは、MathWorks社が開発した数値計算・プログラミング・可視化が一体となったプラットフォームです。

名前の由来は Matrix Laboratory(行列研究所)。その名の通り、すべてのデータを「行列(マトリクス)」として扱う設計思想が、現代のディープラーニングやデータサイエンスと完璧にマッチしています。

1. なぜ「Python全盛期」にMATLABなのか?

2026年現在、データサイエンスの世界はPythonが主流ですが、製造業、自動車、航空宇宙、無線通信といった「失敗が許されない工学分野」では、依然としてMATLABが圧倒的な支持を得ています。

特徴PythonMATLAB
ライブラリ有志による開発(バラツキがある)公式のToolbox(検証済み・高信頼)
GUI操作コード記述がメインマウス操作の「アプリ」で完結できる
シミュレーション構築に時間がかかるSimulinkによるブロック線図での設計
サポートコミュニティ頼みMathWorksによる専任サポート

2. 2026年の衝撃:AIエージェントとの融合

最新のMATLAB 2026では、これまでの連載で紹介してきた「Claude Code」や「Agentic AI」の考え方が標準機能として組み込まれました。

① MATLAB Copilot / AI Chat Playground

ブラウザやデスクトップから、「この実験データをプロットして、異常値を赤色でマークして」と自然言語で指示するだけで、MATLABコードが生成・実行されます。

② エージェントによるドキュメント自動化

以前紹介したMCP(Model Context Protocol)を介して、Claude CodeがあなたのMATLABライブスクリプト(プログラムと説明文が一体化したファイル)を読み取り、「解析結果の要約 README」をGitHubに自動でプッシュするといった連携も可能です。

③ 生成AIを組み込んだ「モデルベース開発」

シミュレーションモデル(Simulink)の構築をAIが手伝ってくれます。「0.1秒以内に静定する制御系を作って」と頼めば、最適なパラメータをAIが探索し、ブロック図を自動構成します。

3. MATLABを「今」学ぶメリット

単なるプログラミング言語としてではなく、「物理現象をデジタルで再現する力」が手に入ることが最大のメリットです。

  • 画像の1行処理: 画像の読み込みからフィルタリングまで、Pythonなら数行必要な処理が1行(img = imread('file.jpg');)で直感的に書けます。
  • 強力な可視化: 3次元グラフやアニメーションが、プロフェッショナルな品質で即座に出力できます。
  • 現場へのデプロイ: 作成したアルゴリズムを、そのままC言語やHDL(ハードウェア記述言語)に変換し、組み込みデバイスに載せることができます。

4. 初心者が最短で触れてみる方法

「高いライセンス料がかかるのでは?」と心配な方も、まずは以下のステップで無料で始められます。

  1. MATLAB Online: ブラウザだけで動く無料版(機能制限あり)を試す。
  2. MATLAB Drive: クラウド上でファイルを管理し、スマホアプリからも計算を実行。
  3. Self-Paced Courses: 公式の無料入門コース(MATLAB Onramp)を2時間受講するだけで、修了証がもらえます。